この度、2025/02/20にインストゥルメンタルアルバムである INNOCENT MIRAGE をダウンロード配信にてReleaseした黒咲鮎花氏。今回はINNOCENT MIRAGEや様々な制作の舞台裏をインタビューしていきます。
-黒咲鮎花名義では初のアルバムとなりますが、まずは制作の経緯を自己紹介も含めてお願い出来ますでしょうか?
この場で初めて私のことを知った皆様、そして以前から知っていた皆様、改めまして黒咲鮎花です。本日は皆様宜しくお願い致します。まずこの作品に関してですが、制作は2014年の中旬からスタートしまして、それから約1年じっくりと制作に取り組むことが出来た作品です。当時は同人音楽界隈で活動していまして、2015年のM3(同人音楽即売会)向けに作った作品になりますね。わたしのDTM歴はかなり長くなりますが、黒咲鮎花と名乗る以前にも別名義でネットを中心に音楽活動を行っていました。
-なるほど。2015年のM3頒布、それから約10年後にこのINNOCENT MIRAGEをダウンロード配信としてReleaseされたわけですが、ここまで期間が空いた理由は何でしょうか?
もともとM3向けに作った作品ですし、その後に都内近郊から長野県に移住したことで生活環境の変化もあり、音楽からは遠のいていた時期がありました。ただそんな中でもこの作品は自分でもよく聴いてて、年月が経過するほどこの INNOCENT MIRAGE という世界に蝕まれていったんですね…(笑)
-蝕まれていった…?(笑)
夜ベッドに入って、寝る前にこの作品をヘッドホンで音量上げて聴くんです。オープニングからコイン投入音、最初のステージ〜と始まって、やがて最終局面、エンディングと続きます。聴きおえる頃には1つのゲームをプレイし終えた、INNOCENT MIRAGEという世界を体感した気がして…
-なるほど。曲名からだと少し分かりづらいですが、ファイル名には使用を想定した箇所がハッキリと書かれていますね。
ほんとは曲名に盛り込みたかったのですが、そうすると曲名が長くなりすぎてNGなんです。当時のM3で頒布したジャケット裏には記載していたのですがね… そんなこともあって、今現在 ASPHALTIC WIZARDS として活動する中、この作品も少しでも多くの方に聴いて貰いたいと思い、ダウンロード配信Releaseに踏み切ったと言う経緯になります。
-INNOCENT MIRAGE という今作品ですが、ヴァーチャルゲームミュージック(架空のゲームサウンドトラック)として制作されたとか?
私がゲームミュージック大好きで、ダライアスに始まりニンジャウォーリアーズ、ドラゴンセイバー等あの当時のアーケードゲームミュージックから音楽という世界に魅力されました。初めて買ったCDがダライアスⅡでしたし、その次に買ったドラゴンセーバーのサントラは今でも聴いてます。セーバーの世界観もとても好きですしね。なので自分でゲームミュージックのサントラを作りたいと思うのはある意味自然なことで。いつかやってみたいと思っていたので当時制作に踏み切ったんです。80〜90年代の硬派なアクションゲームをイメージして、ゲームで想定される全ての曲を作りました。
-たしかにこれだけの曲数(全20曲)があると普通にゲームがあってもおかしくないですね。
全8ステージ+ボス曲4曲、あとはオープニングにエンディング、コイン投入音やステージクリア曲等、全て作りましたからね。マスタリングも曲数が多いのでこの作品は大変でした。誰かがもし INNOCENT MIRAGE を物凄く気に入ってくれて、ゲームを実際に作ってくれたら曲は無償で提供しますよ(笑)
-全編を通して暗く退廃的なイメージを持たせながら、ノリの良いBGM群になっていると思うのですが、これは何か意図があるのでしょうか?
私が大好きなゲームミュージックって、やっぱり総じてノリの良いものが多くって。熱心なゲーマーでもあったので、BGMがかっこいいとプレイしたくなるんですよね。PSG音源からFM音源になり、メーカー独自の音があってあの時代はとても大好きなんです。それからPCM音源になってほぼ表現的制限がなくなったのですが、映画音楽的なBGMも増えてきて。
私が思うのは、ゲームミュージックってそのゲームの場面を表現することも重要だと思いますが、何よりプレイヤーが聴いてプレイしたくなるか?ということが映画音楽と完全に異なる部分だと思ってます。なので基本的にノリが良く、ゲームの世界観にぐいぐいと引き込む曲調を意識して作りましたね。
-なるほど。熱心なプレイヤーの視点でも作られているんですね。ちなみにエンディング曲は何処となくバットエンドな終わり方なのですが…結局二人は生還することが出来たのでしょうか?
それは曲を聴いて下さる皆様の数だけ結末があると思います。是非寝る前にヘッドホンでアルバムを通して聴いて脳内でプレイしてみて下さい。そこにはきっと貴方だけの INNOCENT MIRAGE があるはずです。
-そしてみんな蝕まれていくんですね…(笑)
-黒咲氏は CODE:AW というローファンタジー長編小説も書かれています(現在第二巻まで掲載中です)が、今作品である INNOCENT MIRAGE の世界観も完成オリジナルなのでしょうか?
これに関しては、実は元となるゲームが実際に存在しまして、そのゲームを自分なりに再構築するとどうなるか?と言うことを考えて、世界観を作りました。その元となるゲームはSFCで発売されたPSYCHO DREAM というアクションゲームで、カルト的な人気作品なんですよ。
-たしか説明書にエンディングが書かれてたり、色々と奥深い作品でしたね。サウンドも退廃的かつ精神性の高い物だったと記憶しています。
当時のブックレットには世界観を詳細に記述していました。廃都を舞台にしたゲームの中にピルを飲んで入り込むと言うところは同じですが… その他を再構築した感じです。なので PSYCHO DREAM のオマージュ作品と言っても過言ではないですね。プロモーションビデオも制作したので是非観てみて下さい。
-今回はイラストレーターであるFUJIN氏の書き下ろしとなっていますね。黒咲氏のメインのユニットであるASPHALTIC WIZARDS のジャケットも担当されているとか?
はい。専業としてイラストレーターをやっている方ではないのですが、その絵に惚れ込んで描いてもらってます。もともと水彩画が得意な方でファンタジックな優しい絵が最大の強みだったりするのですが、それだと私の作風に合わないので ASPHALTIC WIZARDSでは敢えてモノクロームな作風を依頼してます。今回のINNOCENT MIRAGE ではフルカラーで素敵なジャケットを描いて頂いたので、ASPHALTIC WIZARDS もいずれカラーイラストになるかもしれませんが…(笑)
-カラーイラストの夏色花梨さんも見てみたいですね。ASPHALTIC WIZARDSの活動もありますが、CODE:AWという長編小説の執筆もありますと、かなり大変なのでは無いでしょうか?
そうですね。CODE:AWの世界観を歌にした物がASPHALTIC WIZARDSですし、この2つは同時に存在するからこそ、それぞれが深まると言いますか。やりたいと思ったことは走り出してしまう性格なので… まあ無謀というか無鉄砲というか、心の底から何かを表現することがホントに好きなんですね(笑)
-ちなみにCODE:AWは無事に完結できそうでしょうか?
プロットは6巻までは出来ています。全8〜10巻辺りで完結予定ですが、短編および中編のサイドストーリーも織り交ぜていく予定です。あくまでメインは音楽なので執筆スピードはかなり遅いと思いますが、必ず完結させますし、音楽とうまく両立出来ればと考えております。こちらも応援宜しくお願い致します。
-今回のセルフインタビューは以上になります。ゲームミュージックに非常に影響を受けている黒咲氏のサウンドは、更にそこからゴシック音楽の要素を融合させたものとなっている。次回は黒咲氏のメインユニットである ASPHALTIC WIZARDS そして CODE:AW について深くお話を伺う予定です。お楽しみに!