室長室

UCIA日本支部である新宿の地下深くに存在する拠点、グラウンドベース。室長室の中で、ハーディは数々のデータに目を通しながら時折、天井を見つめていた。そんなとき、ドアをノックする音がする。

「入りなさい」

入ってきたのは神蔵だった。険しい表情をした神蔵は、ハーディのデスクにそのまま向かってくる。

「――どういうつもりだ? どうして姫宮をUCIAに配属させた? 俺は何も聞いてないぞ」

睨み付けるような視線でハーディを見つめる神蔵。ハーディはデスクに置いてある珈琲を口に含む。

「わたしにUCIAの人事権があると思っているの? 姫宮の採用は上層部の判断よ。文句があるなら――国防総省にでも行ってくることね」

「……ふざけるな。姫宮をFBIに戻せ。あいつはUCIA《ここ》にいる人間じゃない」

「……まあ、可愛い子だものね。FBIからの報告書は読んだけど、並外れた直感能力を持ち合わせており、幾多の事件解決に貢献した――とあったわ。貴方も色々とそのおかげで命拾いした事もあったみたいね」

「そんな不確かものを当てにするほど、ここは人員で困っているのか? さっきも言ったが、姫宮をFBIに戻せ。あいつは軍人じゃないんだぞ!」

神蔵が声を荒らげる。

「――私もさっき言ったけど、姫宮のUCIAへの配属は上層部の決定よ。只でさえ貴方はUCIAで手厚くもてなしてるの。貴方が関わった事件の詳細は私達にも伏せられてるわ」

「……何が言いたい?」

「――貴方、CODE:AWが本当は何なのか、知っているんじゃ無いのかしら?」

氷のような視線で神蔵を見つめるハーディ。だが神蔵もハーディを睨み付けるように言葉を続ける。

「……それについては知らんな」

「――本当かしら?」

睨み合う二人。しばらく時が止まったかのように、二人は微動だにしない。

「……まあ、いいわ。貴方が所属していた機関についてはおおよそ見当がついているし、何が起こったかもある程度把握してる。あなたが姫宮を心配する気持ちは分かる。しかし配属の事実は変えられないし、FBIへ戻すことも私には出来ない。それはハッキリ言っておくわ」

「…………」

「もう1つ。何があったかは知らないけど、一人で先走るようなことは慎みなさい。同じ過ちを繰り返したくなければね……」

しばらくすると、神蔵は何も言わずに室長室を出て行った。

「……まったく、ここは問題児が多いわね。頭が痛くなるわ……」

モニターに映る人事データを眺めながら独り言を呟き、ため息をつくハーディだった……。

第二章 捜査開始 へ

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